ゆがみ取りSPATの理論的裏付け

ゆがみ取りSPAT開発物語り」でも書いたように、操体法のみで施術をしていたとき、理論的裏付けがはっきりしないことは私には何とも「落ち着かない」ことでした。

なぜ、落ち着かなかったというと、医学に転進以前の私の経歴が関係しています。
誠快醫院ホームページのプロフィールで書いたように、横浜国大の工学部建築学科で工学んだ経験から、私は物事は原因と結果の関係がしっかりと分かるものだと思っていました。
しかし、医療機関ではなぜか原因が分からな疾患について対症療法的な治療が行われ、骨格のゆがみや生活習慣といった西洋医学的でない要因には目が向いていないのです。
そこで、操体法やゆがみ取りの有効性について、基礎医学の生理学や解剖学、運動学を基にして理論的整合性のある説明を組み立ててみました。

ゆがみ取りSPATの実技は、動診(ゆがみ診断)→操体法(筋緊張低減)骨格矯正、の手順で進めます。
DVDブックの「ゆがみ取りSPAT下巻」では、安全性を最優先して頸椎の矯正をストレッチにしていますが、本来は矯正操作を行います。
それぞれの要素について、私が考える理論的な裏付けを説明していきます。

1.動診(ゆがみ検査)

動診では、患者さんに対称的な抵抗運動をしてもらい、どちらが「やりやすい」かを答えてもらいます。 「やりやすい」と曖昧な表現していますが、詳しい中身は、痛くない>気持ち良い>力を入れやすい>違和感がない、の順で「やりやすい」方を決めます。

そもそも、なぜ動くことでゆがみが判定できるかと考えてみると、人には「位置覚」という感覚があるからです。
位置覚とは、人が自分の体の相対的な位置関係を知覚する感覚です。
例えば、目をつぶっている患者さんに「右手をまっすぐ前に伸ばして下さい」と告げたとき、皆さん間違いなく右手をまっすぐ前に伸ばします。これができるのは、当たり前と思われるかもしれません。

しかし、もしロボットに同じ動作をさせようとすると、右肩に当たる部位と上肢との角度を決めるセンサーが必要です。このセンサーに当たる感覚が、人の持つ位置覚です。
この位置覚の精度は非常に高く、肩関節や股関節などの大きな関節では1度の角度変化でも感知し、指関節などの小さな関節では0.1度でも判別できます。

人には位置覚という鋭敏な角度センサーがあるので、ゆがみがあるとはっきり意識しなくても、正しいバランス点からのズレ、すなわちゆがみが判ります。
そして、どちらにゆがんでいるかといえば、それは「やりやすい方」です。

なぜ「やりやすい方」にゆがんでいるか、の一例を示すと、内臓の障害やストレスがあると無自覚な筋緊張の増加を来します。すると、関節は筋緊張の高まっている方に持続的に引かれます。
関節可動域(ROM)の大きな関節では、こうした筋トーヌスアンバランスがあっても持続的なゆがみにはならないのですが、動きの乏しい関節、具体的には仙腸関節、上部胸椎、上部頸椎ではゆがみが固定化します。

固定化した関節のゆがみは、周辺の脈管(動静脈、リンパ管)や神経を圧迫し、循環や神経伝達を妨げます。
そして、その関節で対称的な運動をすると、筋緊張の高まっている方向すなわちゆがんでいる方向では、うっ血の取れる気持ちよさを感じます。
他にも「やりやすい方」にゆがんでいる場合がいくつかあり、ゆがみ取りSPAT上巻で詳しく解説しています。

2.操体法(筋緊張低減)

動診で対称的な抵抗運動をしてもらい、ていやりやすい方が決まったら、そちらの方だけ4秒程度の長い時間を掛けて抵抗運動を行います。この手順が操体法と呼ばれています。
操体法を行うと、筋緊張が緩みます。このことは、菌の触診でも判りますが、数値的には関節可動域の拡大として測定することが可能です。

ここで、なぜ操体法で筋緊張が低減するのか、を考えてみます。
操体法では、やりやすい方に中等度の気持ち良い力で抵抗運動をします。
このとき、筋肉内では収縮に伴って筋線維が静脈を圧排し、うっ血が排除されます。
しかし、中等度の力の収縮なので、動脈血の流入までは抑制されません。

ゆがみもととなった持続的筋緊張では、筋肉の代謝が高まり、疲労物質の蓄積によるうっ血が生じています。
疲労物質の蓄積やそれに伴ううっ血があると、筋緊張がさらに高まる悪循環が発生するのです。
操体法でうっ血を除去すると、こうした悪循環が断ち切られ、筋緊張が低減されるのです。

3.骨格矯正

上記で説明したように、関節はやりやすい方向にゆがんでおり、それは動診で判別可能です。
そして、そのやりやすい方向へ操体法を行うことで、ゆがみを作りだしている筋緊張を緩められるのです。

こうした筋緊張の緩んだ状態を作りだし、その後に「やりやすい方=ゆがんでいる方」の反対側に、軽い瞬発力で矯正すれば骨格のゆがみは 矯正されます。

この場合、関節周囲の筋肉を含めた軟部組織は緊張が緩んでいるので、中等度の力でも十分矯正がなされます。
もし筋緊張を緩めるプロセスを抜きにして、いきなり矯正操作を行うと、緊張した筋肉を無理矢理牽引することとなり、事故発生の危険を高めます。
繰り返しますが、SPATでは操体法までで筋肉をゆるめてから矯正するので、極めて安全です。
事実、開発以来20年超の臨床経験で、軽微なものも含めて事故例の報告は一例もありません。